親のいいところも、そうじゃないところも、いつの間にか……
< 本文は:物語風に2分 >
目次
1.タウパの前書き <まねるのは当たり前>
2.親がそうやっていた
3.親がやってなかったから
4.てっとり早い、それはまねた、それとも似た?
5.これも親ゆずり
6.まとめ <親を想像できる>
1.タウパの前書き <まねるのは当たり前>
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
そんなの当たり前だよ。
お父さんの、まねするのなんて。
女の子は、お母さんのまねするんだと思うよ。
ぼくも、もう少し大きくなったら、お父さんを手伝う。
いっしょに、
海へ漁にいったり、林へ材料をとりにいったり。
家の骨組みにつかうのは、パンダナスの木。
そのぐらいもう、しってるってばぁ。
2.親がそうやっていた
ヤシ林をとおる、人が歩いてできた道です。
オノが幹にあたる音がひびき、聞こえてくるほうへギンガが歩いていきます。
道からはずれて草むらに入りました。
「ここにいたのか」
オノを持った手をとめ、トーヘンボーがふり返ります。
「おお、来てくれたか、ずいぶん早いな」
「そりゃあ、おまえ、集落からこんなに近くだからな」
トーヘンボーが手の甲で、額の汗をぬぐいました。
「親父は、近くで木をさがすのが、うまかったんだ。どうだ、これ。母屋の屋根の枠につかうには、上等な木だろう」
トーヘンボーが、パンダンスの木をみあげます。
3.親がやってなかったから
ギンガが幹に近づきました。
トーヘンボーの手からオノをとり、刃の背で幹を軽くたたきます。
「これのどこが上等な木なんだ」
トーヘンボーが、腕を組みました。
「おまえには、わからないのか。まっすぐに成長した木だぞ」
「そもそも、集落からこんなに近くに、いい木はない」
「みてみろ、枝を落とせば、いい丸太になる」
「成長の具合を確かめてないようだな」
ギンガがもう一度、オノの背で幹を軽く二度たたきました。
「聞いたか、わかっただろう」
「なにが?」
4.てっとり早い、それはまねた、それとも似た?
ヤシ林をとおる道を、ギンガとトーヘンボーが歩いています。
トーヘンボーが、ギンガの背中にむかって言いました。
「うちの親父は、てっとり早いのが、好きだったからなぁ」
ギンガは、前をむいたままです。
「あの木は、みた目はいいが、もう何年か経たないと、じょうぶな丸太にはならない」
「だから屋根の枠が、折れちまったんだな。俺の選び方がよくないから、他の丸太もダメになるかもしれないな。それにしても、どこまでいくんだ。木を担いで帰るんだぞ」
「よし、この辺でさがしてみるか」
ギンガが道をはずれ、ヤシの木の合間に立つ、雑木の横を進みました。
5.これも親ゆずり
ギンガが、オノをふりはじめました。
かたい幹にあたる、甲高い音がひびきます。
木が細かくなって飛び散りました。
トーヘンボーがギンガに、一歩近づきます。
「よし、そろそろ交代するか」
トーヘンボーが、オノを受けとりました。
飛び散る木くずが、陽光に白っぽく透けるようです。
「おまえ、どっちに倒すんだ?」
トーヘンボーがオノをおろし、もう一方の腕をあげて指をさしました。
「こっちがいいだろう。あとの枝をはらう作業が楽だ」
ギンガが首を横にふります。
「確かに楽だ。だが、あれが目に入らないのか?」
トーヘンボーが顔を、つきだしました。
「わからないぞ、なにがあるんだ?」
「若い木があるだろう。あれはいい木になる。守ってやれば先々、家の材料になる」
トーヘンボーが、目を丸くしました。
「そんなのずっと先じゃないか。自分たちがあの木をつかうとは、限らないだろう」
「だが、俺の親父は、そうしてた」
6.まとめ <親を想像できる>
こんにちは、どふぁらずら。
島の子は特に、親が師匠みたいなものずら。
子は親の鏡。
子からどんな親か、想像できるずら。
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