目次
1.タウパの前書き
2.おじいさんとおばあさんの花
3.他界・おばあさんがお花へ・夜に咲く
4.雨が降っても
5.体調が少しぐらい悪くたって
6.いつになることやら
7.新月の夜に会える
8.花といっしょに
9.うれしい顔
10.まとめ
それでは、物語のように、どうぞ
1.タウパの前書き
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
ここにでてくるレケさんは、40才をすぎた細身のおばさんです。
自分からすすんで幸せになった人です。
そっちを読むと、レケおばさんがどうして親切なのかわかります。
集落の人はみんな、
レケおばさんが好きなんだってばぁ。
💦 レケのページは、こっち >
2.おじいさんとおばあさんの花
そこはヤシ林の中の、草むらでした。
「レケ、レケ、やっとじゃ、やっとみつけた。これじゃ、これ」
「白い花なんて咲いてないわ。ほんとうに、これなの?」
「ああ、まちがいない。ずいぶん長いことかかったじゃ。レケに毎日、わしの杖のかわりに、なってもらって、ほんとうにたすかった」
「おじいちゃんのその笑顔が、私のちいさな幸せよ。私、歩き方がへんだから、横を歩くのたいへんだったでしょう」
「そんなことはない」
おじいさんがレケの肩につかまって、腰をかがめます。
「まわりの草より、頭を少しだしてるだけで、まだ若いが、大きくなっていつか、花を咲かせる。わしが、死んだらばあさんを、ここへつれてきてやってくれんか」
「なに言ってるのよ。おじいちゃんが、つれてくればいいでしょう。わたしが、おじいちゃんとおばあちゃんの両方、面倒みますから」
おじいさんが、小さく息をはきました。
「咲かんのじゃよ。こいつはそう簡単に、花を咲かせん。わしは、そろそろじゃ。歩けるうちに逝くじゃ」
3.他界・おばあさんがお花へ・夜に咲く
それから少しして、おじいさんが空へあがりました。
日の入りと日の出の、ちょうどあいだぐらいの深夜です。
敷地の前をとおる道で待っていたおばあさんが、レケの肩に片手をおきました。
「こうやって毎晩いっても、レケがいっしょだから、安心だって。息子たち、なにも言わないの。ほんとに、レケにはたすかるわ」
集落からでて、ヤシ林の中をつづく、細い道をすすみました。
「ごめんなさいね、レケ、こんな遅くに。その花が、はじめて咲くのは夜なの。おじいさんとその花を見たのは、昼間だったけど、せっかくおじいさんが、さがしてくれたんですもの、はじめて咲かせる花を見たいわ」
ヤシの木のあいだに、星の青白い光がひろがっていました。
道からはずれ、草むらをいきます。
立ちどまりました。
「あらあら、今日もだめね。明日は、咲くかしら……」
4.雨が降っても
深夜、目を覚ましたレケが、屋根の下からでようとして、足をとめました。
≪少しだけど降ってるわ。お願い、すぐにあがって≫
いっぽうの肩を引き、いきおいをつけるように前にだし、軒をくぐりました。
枝葉が道をおおい、雨が大きなしずくになって落ちてきます。
おばあさんが着ている茶色いワンピースの肩が、色を深めていました。
「降ってきたわねぇ」
ドサッと大粒の雨が降り、サッとあがる場合が主でした。
「もうあがったわ。よかった」
その帰り道でした。
「なんど、雨に降られたかしらねぇ」
「ひと晩に2回は、めずらしいけど、数えきれないわ」
おばあさんとレケのあごから、水滴が落ちました。
「本降りになったわねぇ。私は古い人間だから、このぐらいへっちゃらだけれど、レケは寒いでしょう」
「あらっ、わたしだってもうなれたわ、どってことないわ」
「なに言ってるの、肩が小さくふるえてるじゃない。ふるえないように背中に力を入れて。なかなか花が咲かなくて、つらい思いをさせて、ほんとうに、ごめんなさいね」
5.体調が少しぐらい悪くたって
雨にぬれ、家に帰ったレケが、乾いた布で体をふきます。
ですが、冷え切った体が温まりません。
葉をあんだマットに横になり、膝をかかえて丸まりました。
東の空が明るくなるのを待って、浜へでます。
腕が胸の前で交差していました。
「ああ、生きかえる思いだわ。ほんとうにあったかい。太陽さん、どうもありがとう」
レケが片手をお腹にあてました。
「お腹、こわさないといいけど……」
下痢になることがしばしばあり、おばあさんに待ってもらい、レケはしげみで用を足し足し、歩きました。
危惧するおばあさんに、笑顔をむけて言います。
「だいじょうぶよ。お腹は、関係ないわ。わたしは、歩くだけですもの。おばあちゃんだって、熱をだしたりして具合が悪くても、くるじゃない。わたしだって花が咲くのを、見逃したくないわ」
6.いつになることやら
「今夜は、月が明るいわねぇ。こんな日ばかりだと、いいんだけどねぇ」
木々のあいだの空間が、金色がかっているようです。
レケがほほえみます。
「ほんと、歩きやすいし、気持ちがいいわ」
「明日が満月ね。なんどまんまるのお月様を、見たかしらねぇ」
「そうねぇ、もう15回は、真っ暗な新月の夜をすごしてるわ」
「そんなになるかしら。それじゃあ、そのあいだにひとつ、年をとったのね。はやいわねぇ」
「それにしても、いつになったら、咲くのかしら」
通いはじめたころは、まわりの草より背が高かった程度でしたが、大人とおなじぐらいの丈に成長しています。
7.新月の夜に会える
ヤシ林を歩くレケとおばあさんの腕を、風がなでていきます。
「今日は真っ暗ねぇ」
島の者は、夜目が利きます。
「また、新月がきちゃったわ」
こんどは、心の中でささやきました。
≪あっ、だれかいる。おじいちゃんよ、おじいちゃんが、先を歩いてるわ≫
レケが横をむき、おばあちゃんと顔あわせ、ふたりがニコッとします。
レケが先を歩く人の背中へ、視線をむけました。
≪おばあちゃんも、おじいちゃんに、気づいてるわ。おじいちゃん、最初のころにも、きてくれたけど、それからずっとこなかったから≫
おばあさんが、とってもおだやかに言いました。
「そろそろ、咲くのかもしれないわねぇ」
8.花といっしょに
満月が、林をてらしていました。
レケの肩に、おばあさんが片手をおいて、草むらを歩きます。
レケとおばあさんが、目を大きくひらきました。
「あらっ!」
ふたりの足がはやまります。
「うわぁ、なんてきれいなの。小さくて白い花が、いくつも」
レケとおばあさんが、花を前にしました。
「ひとつひとつみると、健気ねぇ。わたしはね、林へ作業にきてて、この花の前でおじいさんに会ったの。そうしたら、結婚をもうしこんでくるのよ。なにがなんでも家族の許しを得るから、頼むって。おじいさん、この花をみて結婚しようと思ったんですって。あとからおしえてくれたわ。咲いていてくれたおかげで、わたしは幸せだったわぁ」
おばあさんが、レケに顔をむけました。
「わたし今夜は、ここですごすわ」
「わかったわ。朝、迎えにくるから」
おばあさんがうれしそうにほほえみました。
9.うれしい顔
ヤシ林へさしこむ朝の初々しい光が、下草をかがやかせました。
「おばあちゃん、おじいちゃんに、会えたかしら」
レケは足取りが、はずむようです。
「おじいちゃんと、いっぱい話したんだろうなぁ」
レケが、立ちどまりました。
「あら、あら、おばあちゃん、花の前でねむっちゃって」
おばあさんが片腕をのばし、そこに頬をのせています。
レケが歩みよりました。
「も~、うれしそうな顔をして、まだ、おじいちゃんと話してるのかしら」
レケが地面に、両膝をつきました。
「えっ、もしかして!?」
おばあさんが、息をしていません。
地面に書いてあります。
レケ、ありがとう。
10.まとめ
こんにちは、どふぁらずら。
レケみたいに、つづけるのは、たいへんずら。
んだが、いいことがあった。
おばあちゃんのうれしそうな顔と、ありがとう。
最高ずら!
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