亡くなった妹のねがい。
それは妹の仕業か、それとも夢か?
< 本文は:物語風に5分 >
目次
1.タウパの前書き
2.星あかりのもとで
3.妹からのおねがい
4.もっとがんばらせてる
5.こんなに高いところで
6.いつもの作業・木の上の作業
7.どうするつもりなんだ
8.黒い海にかがやく筋
9.こがね色の光のなかで
10.光のつぶ・はずむ声
11.作業をつづけるために
12.まとめ
それでは、物語のように、どうぞ
1.タウパの前書き
こんにちは、島に住む10才のタウパです。
島の作業は、海や林でする。
帰り道に、つかれがでるとつらいけど、
それだったら、まだいい。
作業中のつかれは、命にかかわるんだってばぁ。
2.星あかりのもとで
月のでない新月の夜でした。
星のあかりにてらされ、白い砂の干潟が沖へひろがっています。
18才のトーヤが、獲った魚をいれるヤシの葉をあんだカゴを腰にさげ、しめった砂を素足でふんであるきます。
カゴのきしむ音を聞きながら、低い空に光る星へむかっていくようでした。
「お兄ちゃん、そのままだよ。うしろをみないで。それにしゃべっちゃダメ。わたしの名前をいったらわたしは、ここから消えなきゃいけなくなるから」
トーヤが、心のなかでいいました。
≪まさか! トットなのか――。新月の夜は亡くなった人が、でてくるっていうが……≫
💦 そのページは、こっち >
3.妹からのおねがい
星あかりの注ぐ空間に、カゴのきしむ音と妹の声が、すいこまれます。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんは、がんばりすぎだよ。日がのぼるころにはもう林にいて、材料を切りだすのだってたいへんなのに、それを持ってかえって家を修理したり、こうして漁にまできたりするでしょう。ここからあるいて魚が獲れるところまで、まだずいぶんあるよ」
潮だまりを踏み、水をはねあげる音がたちました。
「お兄ちゃんに、おねがいがあってきたんだ。次の満月の夜までに、木の上にブイアをつくってよ。お兄ちゃんが安心して、ねむれるぐらいの広さでいいから。でも、できるだけ高いところだからね」
トーヤが首をかしげました。
「お兄ちゃん、働きすぎだから、お兄ちゃんといっしょに、あそぼうと思って。木の上のブイア、約束したからね」
4.もっとがんばらせてる
漁からもどったトーヤが、トットのことを父に話し、家の作業をへらす了承をえました。
翌朝、オノを手に林へはいり、ブイアの骨組みになる木を切って、皮をむきます。床にはる乾燥したヤシの葉の芯を集めようと、かれおちたヤシの葉をさがしてあるきました。
≪まったく。新しくブイアをつくるだけでも、たいへんなのに。家の作業だってしなきゃならなくて、トットのやつ働きすぎだっていいながら、俺にもっとがんばらせてるじゃないか――≫
オノをふってヤシの葉の芯のりょうがわから細長い葉をおとし、芯の形をととのえて、先のほそくなる棒にしました。
床をくみたてるのにつかう紐は、曽祖父母がヤシの実の皮の繊維をよって、つくってくれます。
5.こんなに高いところで
≪トットのやつまさか、ヤシの木の上だなんて思ってないよな……。そうすると床をささえる木材がもっと必要になるし、あと一週間ていどじゃ完成させられない≫
浜辺にたつヤシの木をみあげたトーヤが、そのとなりのパンダナスの木へ、視線をうつしました。
≪ヤシの木からしたらずいぶん低くなるが、こいつなら枝を利用できるからな、よし――≫
トーヤが材料をはこびます。
≪いてっ、いてぇなぁ。まったく、こいつにのぼるには、神経をすりへらすぜ≫
葉のわきにならんだ棘が、背中をこすりました。
≪よし、ブイアをつくるには、この枝の上がいいだろう。だが、こんな高いところで作業をするとは――≫
トーヤが木の上から、下をみました。
6.いつもの作業・木の上の作業
母屋からはなれて家がたっています。
≪せっかく集めた材料だが、数本ぐらいしょうがない。修理しないとな≫
自分の腰ぐらいの高さの床に、トーヤがあぐらをかいています。
≪なんだこりゃあ。気づかなかったぜ。今までどれだけ楽な作業をしてたんだ≫
首を横にふりました。
≪俺は材料を持って、パンダナスの木にのぼるだけでも、ずいぶん緊張してる。作業となると、もっと気がはってるのかもしれない≫
トーヤが片手で、床をかるくたたきました。
≪こんなところの作業じゃ、ねむくなるぜ。それにくらべ木の上じゃ、どれだけ神経をすりへらすんだ。まったくトットのやつ……≫
7.どうするつもりなんだ
木の上の床が、半分ほどはれました。
≪ようやく、あぐらをかいて作業ができる≫
ヤシの葉の芯を、ふといほうとほそいほうを交互に、下のささえにしばりつけていきます。
≪しかし、いいながめだぜ≫
葉を切りおとして視界がひらけ、海が青くかがやいていました。
≪よし、今夜の満月に、なんとか間にあいそうだ。月といえば、上の葉っぱをもう少し、おとしておくか≫
自分の背丈ほどに細長い葉が、途中で折れまがっています。
≪お兄ちゃんとあそぶって、トットのやつ、満月の夜じゃ、でてこれないじゃないか。いったい、どうするっていうんだ……≫
8.黒い海にかがやく筋
≪よし、この芯で最後だ≫
完成した床を片手でたたき、空をみあげました。
「トット、俺は約束をまもって、ブイアをつくったからな」
うしろにころがり、ねむりにおちます。
西の空から、夕焼けがきえました。
海が夜空の星をうつしだし、そこにしょうじた一本の光の筋が、ブイアにまっすぐにむかってきました。
東の空に大きな月があがり、こがね色の光がブイアにねむるトーヤをつつみます。
9.こがね色の光のなかで
光りのなかから、トットの声が聞こえてきました。
「お兄ちゃん、ステキなブイアができたね。お兄ちゃんはがんばりすぎるから、ほんとうだったらヤシの芽を切ったあと、木からおりようとして手をすべらせ、高いところからおちてたんだから。まったくも~、世話がやけるんだから」
トットの声が光をちらし、無数のこがね色のつぶがしょうじます。
「ブイアの作業で、どっぷりつかれたでしょう。お兄ちゃんはこれから、3日間ねむりつづける。ゆっくりやすんでからは、ほどほどにがんばってね。いい、ほどほどに、だよ」
10.光のつぶ・はずむ声
「ほら、ほら、ほら。お兄ちゃん、ねていられないよ」
光のつぶがトーヤの顔を、りょう方にわかれてすべりおります。
「あっ、目をさました。それじゃあ、またいくよ。ほら、ほら、ほら」
こがね色のつぶが舞い、それをトーヤが片腕をかざしてよけました。
「ほら、ほら、ほら。お兄ちゃんも、やってこごらんよ」
トーヤがりょう手で光をすくい、どっちへほうるか迷います。
「ほら、ほら、ほら、こっちだよ」
トーヤが光をほうりました。
「わーい、わーい、お兄ちゃんあそぼう、あそぼう。あそぶとつかれが、どんどんとれるから。ほら、ほら、ほら。あっ、じょうず、よくわたしのいるところがわかったね。お兄ちゃん、かくれられるんだよ。そこにごろんとすると、全身が光にうもれるから。ほら、ほら、ほら……」
トットが声をはずませ、トーヤがこがね色のつぶにつつまれました。
11.作業をつづけるために
3日目の午後、西の空に夕焼けがひろがりはじめます。
目をさましたトーヤが、海にむいてあぐらをかきました。
「すっきりして、からだがかるいぜ」
りょう腕を高くあげて、からだをのばします。
「もしかしたら俺は、ヤシの木からおちて、大ケガをしてたのかもしれない……」
腕をおろし、首を大きくまわしました。
「手をぬくってことじゃない。作業をつづけるためにだ。ほどほどに。わるくないのかもしれないな」
海面が夕焼けをうつしています。
「それにしてもトットのやつ、新月の夜じゃ、こうはいかねぇな。楽しかったぜ……」
12.まとめ
こんにちは、どふぁらずら。
夢のなかであそぶ。
トットの仕業かもしれない。
んだが、
もしかしたらトーヤは、つかれと月光によって、
夢をみたのかもしれないずら。
おっと!
こっちは、おきてるときにあそぶずら。
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